2005/07/08
恩返しができない

近所に、犬を飼っている家がある。小学生の妹と、中学生の兄がいる。ココアが今よりも小さいとき、このきょうだいにとてもかわいがってもらった。そのときは、ただ黙ってしっぽを振って、なでられていた。

それから数ヶ月が過ぎた今日、ココアとその家の前を通りかかると、あのきょうだいがいた。ココアは強い力で私をひっぱった。大きくしっぽを振っていた。
あのときココアはうれしかったのだと初めて気がついた。

きょうだいは、ココアを無視して遊んでいた。絶対に視界に入っているはずなのに。成犬と同じくらいの体格になってしまった犬は、もうかわいくないということなのだろう。
ココアは、私が行こうと言ってもずっとそこにたたずみ、きょうだいをただ見つめて、高い声で吠えていた。なでてくれることを、ただひたすら信じて。
その姿が、いじらしく、かわいく、そして……悲しかった。

恩を忘れてはいけない、とよく言われる。だけど、恩を与えた側がそれを忘れてしまっていたら、なんだか裏切られたような気持ちになるのはなぜだろう。
私には、ココアの高い声の意味が分かるような気がした。

Mayunezu Space Ver7